ポータブル赤道儀 by Shinohara


日食ビデオ撮影用に、急遽、ポータブル赤道儀を作って欲しいと依頼され、大急ぎで、しかも、ありあわせで適当に作ってみました。
高校生時代、お金と車が無く、写真を撮るためにはポタ赤しか方法がなかったので、何台か作りましたがそれ以来です。

材料 ズンギリ棒3本、木板14mm厚59*160o2枚、 扇形用5.5o厚ベニヤ(2枚を接着)
モーター(ジャンク品。電動フォーカサー用DCモーター)
単眼鏡、コントローラー用ケース、平ギア、スプリング、ベアリング、ナット、ボルト類、アルミ部材など。
仕組み 鉄ズンギリ2本を手で曲げて、カーブを作り、ステンズンギリで回す仕組み。
制作時間 3日

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途中経過のイメージ中(こんな感じでいいっかあ)

地方在住で、物資調達が難しい上、今回は、時間もありませんでしたので、とりあえず、手元にある物で何とかしようと思いました。
省エネのパルスモーターが良かったのですが、ギア比から言って、材料調達が無理そうだったので、ま、これで行くか・・・と、選んだのが、このジャンクモーター。3V弱で駆動させ、平ギア2段にて1回転2分とします。

扇板もこんな物があったのかって? そんな事はありません。
家庭用サークルカッターで、作ったのですが、このカッター、厚さ5.5oまでが限界。家庭でDIYするのは、大変ですね。2枚作って貼り合せました。約45度ありますから3時間ほど行けます。

カーブのズンギリも、市販品ではありません。手で曲げたのみ。力任せです。このズンギリ、直線状態でもかなり偏心があり、直せる部分には手を入れました。こんな目的で作られた訳ではありませんから、当たり前です。ズンギリも、よもや、こんな風に使われるとは思って居なかったに違いありません。
モーターの出力軸には6mmのステンズンギリ棒を扇型の先端に曲げて付けた2本の鉄ズンギリ棒に押し当てて追尾させようともくろんでいます。押し当てる方法もまだ決定していません。
各部接続の方法は、ベアリング2個と10mmボルトです。あとは各部の加工を進めるだけなのですが、うまく動いてくれることを祈ります。
モーターとギア部分 

モーターは、以前にジャンク扱いで手に入れた電動フォーカスを利用しています。DCモーターなので、1.5Vのとき1回転53S 3.0Vで1回転27Sでした。左の画像はモーター部分の平ギア減速部分です。
コントローラーは三端子レギュレーターにて3V弱で30秒を実現し可変させたいと考えました。

ステンズンギリセンターと極軸センターを114.5mmとなるようにしていますから、1回転2分で追尾してくれるはずです。

ギアが見えた方が速度調整やトラブル対処がしやすいので、透明なアクリル板かセロテープで留めて、丸見えにしておきます。

このコントロールボックスは使えませんので新たに作る事となります。
かなりできて来ました。未だ仮組状態ですがいけそうな感じです。
アルミ板は結局使用せず、木材にしました。かまぼこ板(って本当に蒲鉾の板を使ったわけではありません。)二枚の間に扇型が入っています。

極望の位置はこの位かとガムテープで貼り付けてみました。クランプの所を軸として、下からバネで押し付けるか未定です。
コントローラーを仕上げ、これで全てのパーツがそろいました。コントローラーもうまく指定の3v弱の電圧でモーターを回しています。あとは試写です。

おまけで、架台部も作ってみました。
今回の日食地の緯度に合わせてあります。
水準器と、方位修正の機構も付けました。
北から見た部分です。ギア同士を押し当て動かしています。解除するときは右下の蝶ボルトを締めこむとギアがはなれフリーとなり、戻してから蝶ボルトを緩めるとギアが噛み込みます。 極望はホームセンターであった7*18の単眼鏡です。見かけ視界は52度前後でしょうか。ただアイレリーフは無くて眼鏡をかけての使用は出来ません。架台部は方位修正のみ作りました。


試写 このポタ赤を使って、撮影したものです。(撮影、コメント:ちゃっきり)
30秒露出 ミニボーグ+2倍テレコン+ニコンD70 (左2つの画像は、35oフィルム換算で、750o相当です。)
木星と衛星と、何か恒星
月もかすんで輪郭がわからない空で、木星以外は何も見えない空でしたので、とにかく、木星を入れて、望遠鏡で追尾具合を見てみました。状況が悪いので、極望は使っていません。角度も方角もざっと適当にセットしました。
天体写真としては最悪ですが、あくまでポタ赤チェックの撮影なので、ご理解下さい。
日食から帰国後  4月16日 
久しぶりに晴れたので、再度試写をしてみました。

ベガ(右の青いやつ)とこと座ε(ダブルダブルスター)です。
3800mm 相当の画角。
左の画像を拡大してみました。さすがに、これだけ拡大すると、流れているのがわかります。

ビデオカメラ用ポタ赤ですからあ。
これで充分過ぎるほどです。
依頼主(使用者)のコメント:
突貫工事にもかかわらず、実によくできており、感謝感激です。軽くコンパクトで、なおかつ、長時間追尾できます。単三電池4本で、動きます。スピード調整もあり、快適です。試写のとおり、期待以上に精度も良いようです。(ただし、篠原氏もおっしゃるとおり、ふらつきがあり、もう少し、チェックすれば、癖がわかりそうです。日食のビデオ撮影には、何ら問題なく追尾してくれました。お陰様で、ポタ赤の存在すら忘れてました。でもって、皆既直前に、終点に行き着いて、ドタバタ騒ぎとなったのでありました。詳細はちゃっきりTOPからエジプト日食の記録へどうぞ。)

1.重量850g(極軸望遠鏡、モーター込み)
2.単三電池4本。
3.アルカリ乾電池で、24時間以上駆動。おそらく2-3日はOK。(あまりに長持ちするので、実験を途中で中止)
4.追尾2時間。
5.1200mm相当の画面で2時間、太陽が画面から外れない。おまけに、スピードコントロールが付いているので、追尾調整ができる。
6.ワンタッチで容易に再セットできる。

製作時間は正味3日で、材料費はわずかXXXX円足らずだそうです。(主な物はモーター、単眼鏡、電子部品等など)  


他、自作の一部紹介

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