全日本柔道連盟の財政規模SINCE 2001/02/03UPDATE 2001/03/15 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(はじめに)全日本柔道連盟ホームページ上に、『全柔連だより』という全柔連発行の機関誌がPDF形式でダウンロードできるようになりました。この機関誌は全柔連に指導者登録している方か、団体登録した所に送られる物で、一般の競技者やましてや柔道に携わっていない人間には見られなかったものです。全柔連の経済規模に関心を持つ自分としては本来であれば講道館資料部へ行き、こうした資料を調べられるはずですが、不幸にも開館中の平日に訪問出来ませんので、今回はこれを踏み台に使用します。こうした情報公開が行われるのも、ホームページの良さであり、また組織としての意識が、変わっていく傾向と、思いたいです。 なお、文章中で使われる省庁等の名称は、旧名称と新名称が混在しているかもしれませんのであらかじめご了承ください。また、若干、この全柔連だよりは不都合と思われる箇所が墨塗りしてあるようで、自分のダウンロードファイルでは修正予算など、見ることの出来ない箇所がありました。(訂正:この現象はAcrobatReaderの古いバージョンで起きるとお話をいただき、確認できました。最新版をインストールすると、見違えるほど綺麗な画像で見ることが出来ます。邪推して、申し訳ありませんでした。貴重なデータ、ありがとうございます) (資料1:平成11年度)・収支決算:全柔連だより第18号P6より作成)
(法人会員)今まで自分は登録者人口ばかりを見ましたが、実際には「法人会員」が存在しました。全柔連だより18号1ページ目で横尾一彦広報委員長のインタビューがありますが、そこでは次のように述べています。「財政面での課題では、登録人口の拡大が不可欠です。なかでも、法人会員は平成10年度から120社、170社と増加してきました。今年の目標(注:会誌の発行は2000年)は230社と努力します。また、消費者金融からの大会協賛いついては、JOCの判断を待って、慎重に対処していきます』 当たり前といえば当たり前ですが、ここで以前、自分で書いた記事のミスに気づきました。『五輪・柔道・お金』では手持ちの唯一の資料から平成十年度段階での予算規模を算出した際、ふたつの資料を用いました。「全体比率」と「登録者人口収入」が別々にありましたので、全体比率の会員登録=登録者人口と判断しましたが、要素として法人人口が欠けており、実際の全柔連予算規模は自分が算定した3億円から、その倍以上の7億円程度と判明しました。 この平成11年度の会費は2億4000万円あり、登録者人口が頭打ちの現状を鑑みると、一年前の平成十年度と同じ1億円程度と考えられます。そうなると残りが法人会員の登録費と判断できますので、法人提供の額は1億4000万円程度と推定されます。単純に平成11年度の加盟法人で頭割り(170社)すると、1会員当たり82万円程度の負担になります。230社に増加した場合は、この基準でいけば1億8860万円と、4000万円近い増額となります。 登録者人口がフランス並に増加する可能性は低い(三倍増の必要)ですが、加盟法人は加盟企業(企業に限らず、大学などの学校法人も加盟しているところがあります)を見る限り、まだまだ増える余地があり、今後の開拓が期待できます。とはいえ、地域の柔道連盟や学生単位、実業団単位とそれぞれ個別の存在する実情を見ると、各自が自主財源を確保すればするだけ、中央への支払能力も欠如しますから、難しいところです。二重負担を強いるというのも考え物ですから。 (交付金)以前の段階で計算した国際柔道連盟の予算(五輪があった際の最大予算であり、93年から97年までの四年間総額でだいたい700万ドル、年平均175万ドル=1ドル100円で計算すると1億7500万円)を凌駕する4倍近い額となります7億円です。別に全柔連50周年記念誌では幕張世界選手権の際は、『10億円近い規模』とコメントがありました。この額自体は非常に大きく思えますが、『近代柔道』1997年12月号P17資料では、世界一の(登録人口を持つ)柔道大国フランス柔道連盟の年間予算は約30億5000万円とあり、その規模の大きさは日本の4倍強です。これについての比較は、『柔道環境』フランス柔道連盟の財政規模で述べ、詳細な項目を紹介する予定です。 しかし財政規模が大きくなれば成る程に、交付金に頼る現状は危険なものと考えられます。それが消えてしまったとき、国際柔道連盟における五輪収入のように、自主財源を持たなければ足元が崩れます。 現在の足元を固める収入は登録費です。全柔連五十年誌では「交付金脱却」財政を唱え、登録費ベースに移行したい全柔連の方針があり、それはこうした点から考えても間違っていないと思いますし、自主財源である分、交付金よりも使用目的が自由になるのではないでしょうか。 この交付金を提供してくれるのはどこでしょう? 第一に考えられるのが国です。柔道は日本が発祥の唯一の五輪競技であり、教育的にも使われますし、外交的にもロシアのプーチン大統領が愛好していたり、各国の警察へ取り入れられる点からみても、国が支援する要件は満たしています。 今後、導入される『サッカーくじ』もスポーツ振興目的に運営されます。英国でもこの方法で集めた資金がスポーツに用いられ、強化育成に当てられます。サッカーくじを推進したのは旧文部省です。 スポーツくじの運営と収益の配分を行うのは、文部省の特殊法人「日本体育・学校健康センター」で、毎日新聞のバックナンバー記事では『年間2000億円を売り上げられれば、スポーツ振興に充てる資金は400億円以上にも及ぶ』とあります。以前見た、新聞広告では田村亮子選手が起用されており、柔道競技がその支援を当てにしてもいいと判断できる材料のひとつではないでしょうか。 さらに不正受給問題関連記事で、その報道記事の目的とは別に、交付金の窓口が判明しています。これらの情報を整理すると、現時点での(サッカーくじ導入前、不正事件のあった1999年段階)で、JOC加盟団体の資金提供口が、ふたつあります。 (A:国庫支給)1.スポーツ振興基金助成金・90年から国が創設・基金250億円 ・文部省の特殊法人「日本体育・学校健康センター」(サッカーくじと同一)が運営 2.民間スポーツ振興費等補助金・国庫支出(担当省は旧文部省で、JOCを介していると『近代柔道』2000年8月号にあります)これら交付金の内訳額・比率は不明ですが、これ以外に提供してくれる団体は、選手の肖像権を管理して商業活動を行い、五輪に向けたスポーツ環境を整えるJOCです。 JOCの財源に国庫支出が含まれていますので特別に設ける必要はないかもしれませんが、JOCページ内の記事によれば、国庫交付金は財源の25%程度ですので、JOCが75%を 提供していることになるので、別として考えてみます。 (B:JOC)第二に出てくるJOC。JOCは日本の競技連盟を統括しており、五輪を基準とした「強化選手」指定を行ったり、報奨金を出したりしています。加盟競技連盟選手の肖像権を一括管理するのもJOCであることは、マラソンの有森選手プロ化問題でクローズアップされました。全柔連はJOC交付金の最も優先度の高い団体(最高ランク特A:水泳と陸上も該当)になっています。五輪対策特別強化費(1999年近代柔道7月号に基づく)では実に4000万円の予算を割り当てられています。 1.強化選手活動への資金援助(不明)
JOC指定の強化選手は三段階に分かれます。A・B・H(ホープ)となっており、柔道ではこの該当者がいわゆる「男子強化選手」「女子A指定選手」に指定されていると思います。詳しい基準はJOCで規定されており、JOC公式ページに強化選手表と、その得られる立場などが記されています。ちなみに小川直也選手がプロレスを始める際に、提出した事実上の「引退届け」の内容は、この「強化選手辞退」であったと伝えられています。3.メダル報奨金1990年のアルベールビル冬季五輪からこの制度が始まりました。金メダル300万円、銀メダル200万円、銅メダル100万円です。実際に今回の五輪で考えますと、以下のようになります。()は柔道競技です。増額されたような記憶もあるのですが、現時点で確認できた額で記述します。金メダル・5(4)=1500万円 銀メダル・9(2)=1800万円 銅メダル・5(2)=500万円 合計すると3800万円が支出されています。 4.五輪対策特別強化費この費用がJOCからの支援で最も大きな物です。その収入内での重要度は1999年段階で4000万円という大きさから、高いもののはずです。これが一時的なものなのか(年間予算は別枠であり、特別に賞与のような形で4000万円が賦与されたか)はわかりませんので、最低でも4000万円規模、と考えておきます。ちなみに、JOCの年間予算はJOCページの報道記事から確認する限り、60億円程度、そのうち国からの補助金が15億円とあります。JOCへの関心もあるのですが、とりあえず以前、掲示板に書いた肖像権関連の記事内容を整理して、再掲します。 (参考記事:JOCの活動)・スポンサーの種類1.オフィシャルパートナー(恩典)JOCマークを使用できる (協賛金)4年間で2億円 2.「選手強化キャンペーン」協賛企業 (恩典)企業がCMなどに選手・役員を起用できる (契約金)4年間で8000万円 (選手肖像権使用料)新規に映像を撮影する場合 A・五輪メダリスト=500万円 B・それ以外=350万円 3.自社選手限定企業 (恩典?)自社の選手・役員のみを起用する (契約金)2000万円(記述が無いのですが、多分、4年間) (選手肖像権使用料)無料 (2000年12/22日読売新聞朝刊記事を土台) ・プロ選手、条件付OK今まで:1.JOCは肖像権を一括管理 2.有森選手など一部に限り、特例で認める(確かスキージャンプの船木選手と、スピードスケートの清水宏保選手もプロ化=独自に広告契約を行うしていたと思います) これから: 1.JOCキャンペーンプログラム(『年に数回の協力をお願い』)に協力すれば、コマーシャル出演などを独自に行えるようになる 2.JOCのマーケティングとは別に、商業活動を行う自由を容認 (2001年1月12日読売新聞朝刊記事) このふたつの記事、特に二番目の記事から、事実上、プロ化が始まったと考えていいかもしれません。ただ、独自に行った結果の肖像権使用料がそのまますべて、選手に支払われるのか、或いは起用した場合は、上のような、JOCと企業がまず契約を結ぶのかどうかはここからはわかりません。 尚、JOCページにはマーケティング収益記事があり、7年半で350億円稼いだとの記事があります。 (C:IJF)さて、第三に考えられる交付金が、IJFからの五輪や世界選手権放映権収入の分配です。とはいえ、この額はそれほど大きいと思えません。収入は「大陸連盟」に分配されます。シドニー五輪でさえもせいぜい4千万円程度、加盟国数と大陸連盟独自の活動(審判セミナーや大会運営)を考えると、加盟国一国へ割り当てられる可能性がある(大陸連盟に与えられたお金が加盟国に還流されるか、不明です)分配金はそれほど大きくないはずです。ただ世界選手権開催国は、その世界選手権収益を別個に得られます。仮に世界選手権の収益が1億円あった場合、IJFスポーツ・組織規定で定められた比率、15%を得る権利がありますから、1500万円程度が懐に入ります。また、国を挙げてのイベントなので補助金も出るはずです。前述したように、全柔連50年誌には1995年予算が10億円程度になったとあります。 また実際の経済効果は入場者チケットや放映権料でははかれません。交通費や飲食代、グッズ販売、或いは外国からの出場選手の滞在ホテル代、土産代などもありますから、地域振興としては非常に大きなお金が動きますし、柔道競技そのものの宣伝効果はお金にならないほど、大きいはずです。 現在、五輪と世界選手権は深い関わりにあります。五輪開催国は幾つかの世界規模のスポーツイベントをこなし、五輪を運営できるだけの力を示します。2003年に大阪で世界選手権があるのも偶然では無く、2008年大阪五輪開催を目指す一貫になっています。日本版CASの構想も、これと切り離された物ではないでしょう。 今年に限れば、対抗国(或いは本命)の中国も8月にユニバーシアード大会を北京で開催し、2001年2月現在、2005年柔道世界選手権にも名乗りをあげ、また韓国国際大会・日本国際大会に対して、中国国際大会も予定しているとのことです。国の支援を受けやすい形で、世界選手権収入はそれほど大きくなくとも、組織が扱えるお金は大きくなるのです。大阪の世界選手権はJOCの大きな後援があると想定されます。 参考資料:IJF財務規定項目5.4.3.もしも世界選手権やオリンピックで利益が生じたら、最終的な利益は協議会で決定された以下の表にしたがって、分配される。受け取り比率表
さて、交付金を見ましたが、次は他の項目や大会にかかる費用、また第17号に掲載された平成12年度予算を見ることで、平成11年度の実際の収支を、これからどのように変えていくのかという、全柔連の意志を分析します。 その2へ続く(Coming Soon ?) |