あれから八ヶ月、つい少し前まで尾瀬がオフシーズンだったということもあるが、まさか、彩夏と一緒に尾瀬に行こうという話が、弟の家から飛び込んでくるなんて思いもしなかった。
「じゃぁ、今はまだ雪があるから6月になったら連れて行こうかな…。でも、彩夏はなんで急に尾瀬に行きたくなったんだろう…?去年は行きたい行きたいって騒いでたけど、最近全然尾瀬のこと言ってなかったでしょう?もう、忘れちゃったのかなーって思ってたんだけど…。」
「前にお義姉さんが、お気に入りに登録していったでしょう?…尾瀬のホームページ。あれを一人で見ていたらしくて…。コウちゃんに手がかかって、私があんまり彩夏の相手が出来ないから…。」
コウちゃんというのは、1歳半になる彩夏の弟のことだ。やんちゃ盛りで目が離せない。
いくら潜在的に姪と尾瀬に行きたいと思っていたとはいえ、こんなに早く実現することになるなんて…!
しかも、私が強引に連れて行くんじゃなくて、彩夏本人が行きたいと言っているんだから、伯母の私としては断るわけにはいかない。
こみ上げてくる嬉しさを抑えきれず、すぐに準備するものなどをメモしてメールで送った。
彩夏の尾瀬デビューの日を6月22(土)〜23(日)に決めたのは、
彩夏が大好きな幼稚園をお休みしないですむように…、週末でも比較的混雑していない時期だし…、色々な花が咲き始める時期で私が一番気に入っている季節だから…、雨さえ降らなければ爽やかな時期で…、雨が降ったとしても彩夏は傘をさして散歩するのが好きな子だから…、ま、いいでしょう、という理由からだった。
6月に入って、弟から電話がかかってきた。
「クーちゃんママも尾瀬に行きたいってさ…。それで、僕も仕事は忙しいけど何とかして行くつもり…。ビデオ係が必要でしょ?」と、こともなげに言った。
「え〜、彩夏と二人で仲良く歩こうと思ってたのに〜〜〜。あなたが親バカしたいんでしょう〜?ま、いいけど〜。じゃ、電車で行くのを止めて、夜中に車で出発ということにしようか。クーちゃんママに準備するもの、この間メールで送ったでしょ?あれを教えてあげてね〜。」
こうして、姪と私のハネムーンになるはずの尾瀬行きは、クーちゃんママ(お嫁さんのお母さん)と弟を加えて4人で行くことになった。