森と川の代わりに少しずつ家や道路が見え始め、20時15分に列車はアンカレッジ駅に到着した。展望車両は一般車両と切り離され、展望車の乗客は旅行社専用のホーム?で降りなければならなかった。駅まで5分ほど歩き、預けたトランクを受け取るためにコンテナが運ばれて来るのを待っていると、迎えに来てくれたNorth
Flight Alaska社の田中さんと会った。
「デナリどうでしたか?紅葉はもう終わっていたでしょう?」
「終わりかけていたけど、まだとてもきれいでしたよ。それに、楽しみにしていたワイルドライフツアーもまぁまぁ楽しかったし、オーロラらしきものも見えたんですよ〜。」
「オーロラ見えましたか?それは良かったですね〜。」
「ええ、なんか雲にしては違うな〜という程度でしたけど。デナリ、結構気に入りました。また来る機会があったら、次はトレッキングしたいです。」
「是非、また来てください。明日は氷河クルーズの予定でしたね。これも楽しいですよ。ツアーのバスは、今夜泊るホテルの近くから出発しますから、今夜はゆっくり休んでくださいね。」
荷物を受け取ると、田中さんの車でボイジャーホテルへ向かい、カップヌードルディナーを食べて早々に休んだ。まぶたを閉じると、暫くはアラスカ鉄道で見た車窓の風景が広がった。
第六章:氷河クルーズは中止?!
翌朝は5時に目が覚めた。氷河クルーズのバスの出発時刻は11時だから、そんなに早起きしなくてもいいのに、楽しいことが待っている日はつい早起きしてしまう。今日の氷河クルーズは、デナリ国立公園のワイルドライフツアーと並ぶ今回の旅の目玉である。ホテルでテレビを見ていても面白くないので、バスの出発時間まで散歩することにした。上手い具合にお店も開いていたので、スポーツ用品店と書店と土産物屋に入り、買物を楽しんだ。
10時半にツアーバスの発着所があるホテル・キャプテンクック前に行くと、すでに20名くらいの人がいた。手に持っているチケットの色が私たちの持っているものと違うので、違うツアーなのかもしれないが、たくさんの人がいるというのは心強い。
「ここから、いろんなツアーのバスが出て行くんだね。新宿駅西口みたいだ。」と話しているうちに、さっとバスが来て、その人たちは添乗員らしい人に誘導されて乗っていった。その後、2台の大型バスがきて停まったが、私たちの乗るバスはなかなかやってこなかった。
11時を過ぎても来ないので不安に思っているところに、また違うバスがやってきた。外に出てきたバスガイドさんに氷河クルーズのチケットを見せながら、「プリンセスツアーの氷河クルーズのバスはここから出発するんですよね?」と聞いてみた。
するとなんと言うことだろう!今日は波が高くて氷河クルーズは中止になってるとのこと!
そんな〜。じゃぁ、鯨もラッコも見れないの?突然の出来事に、ちょっと頭の中が真っ白になってしまった。
ガイドさんは、「プリンセスツアーから連絡なかったの?近くにプリンセスツアー社があるから、そこへ行けば返金してもらえるわ。」と言って、行き方を教えてくれた。
中止と聞いて、今回の旅で氷河クルーズを一番楽しみにしていた夫は私以上に落胆してしまい、「僕はついてない…。」と肩を落とした。ここはデナリで満足した私が元気を出すしかない。
「ま、残念だけど、こんなこともあるわよ。次を考えよ〜。今日は何する?チケットはNorth
Flight Alaskaに手配してもらったんだから、とりあえず田中さんに電話する方が先だよね。」と言って、ホテル・キャプテンクックに入り公衆電話を探した。
急いでやって来た田中さんと相談して、今日の予定をアラスカ動物園と市内観光ツアーに決め、氷河クルーズの代金として350ドルを後で返金してもらうことになった。
アラスカ動物園は、市街から20分ほどの場所にあるファミリー動物園だった。
田中さんに「上野動物園みたいに大きくないし、つまらないかもしれないですよ。」と言われたが、無性にホッキョクグマに逢いたくて、動物園への送迎を田中さんに50ドルで頼み、2時間過ごすことにした。
入場料8ドルを払って中に入ると、ホントに小さな動物園だった。樹木の中を通る道を辿って行くと、木製の看板があり、その先にいる動物の絵が描いてあった。
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