デナリ国立公園で野生動物を見たせいか、動物園の動物は全て元気がないように思えた。楽しみにしていたホッキョクグマは寝ていたし、グリズリーベアも拗ねたような目でオリの外を見ていた。ハクトウワシも威厳がなくて、バッファロウは毛並みが悪いせいか病気なの?と思うほど弱々しかった。
元気なのは人間の子供たちだけだった。
2時間後、田中さんと合流し、車で再びホテル・キャプテンクックまで送ってもらった。次は、所要時間3時間の市内観光ツアーだ。田中さんは「郊外にあるネイティブの文化博物館は、一般の観光旅行では行かない場所だし、結構面白いですよ。」と言っていた。
時間どおりにやってきた大型観光バスから降りてきたのは、小錦関を一回り小さくしたような女性ドライバーだった。乗客はたったの8人で、日本人は今度も私たちだけだった。あとは60代と思われるアメリカ人のカップルが三組、みんなフレンドリーで、その中の一組は日本に住んだことがあると話していた。こんな人数では旅行会社は赤字だろうと思ったが、ハワイ生まれのマリリンは、デナリ国立公園のキャサリンに負けないくらいパワフルな女性ドライバー兼ガイドだった。
市内観光ツアーと言ってもあちこち寄るのではなく、実際にバスから降りて見学するのは郊外にある「アラスカ民族文化センター」のみで、あとはマリリンの説明を聞きながら車窓の景色を楽しむというものだった。
アラスカ民族センターでは2時間の自由時間があり、シアターでエスキモーの文化を紹介するフィルムを見たり、各部族に伝わる工芸品作りを見学したり、一周800mのトレイルを歩きながらエスキモーの家々を見学したりした。
展示物を見るのも面白かったが、アラスカン・ネイティブのステージは興味深く、小さな子供達が動物のお面を着けて踊る姿はとても可愛らしかった。
また、館内にあるギフトショップには、エスキモーの文化の薫り高い工芸品が販売されていて、見ているだけで楽しかった。ネイティブ関係の本も豊富にあり、その中の一冊を手に取って写真をみていると、ドライバーのマリリンが話し掛けてきた。
「エスキモーの文化について勉強するのにとてもいい本があるわ。」そう言って、奥の本棚から分厚い本を取り出して私に手渡した。
パラパラめくると、ほとんど絵のない文字だらけの本だった。
「こんなにたくさんの英語が並んでいる本は、私には無理だわ」と言って返したら、マリリンはちょっと顔をゆがめて行ってしまった。ごめんなさい、マリリン。勉強、嫌いなの…。
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