尾瀬を渡る風に吹かれながら、一人で木道を歩いていると、今年の尾瀬のひとコマひとコマが色々と思い出されてくる。

そして、百歩進んでは振り返り、また百歩進んでは振り返った。

今年もありがとう。
思い出をたくさんありがとう。
じゃぁ、また来年ね…。

声に出して言ってみると、涙がほろりとこぼれてしまった。
山ノ鼻に到着すると、ビジターセンターに七五三木所長を訪ねた。
建物の脇には、24日に降った雪がまだ残っている。
30分近くも世間話をして、ようやく鳩待峠に向かう決心がついた。
来る時に見た風景に背中を向けて歩き出す。
そして、ついまた後ろを振り返る。

さて、帰ろう、本当に帰ろう。

そう呟きながら、一人で歩くと独り言が多くなるんだな…と笑ってしまった。
晩秋の柔らかい陽射しに包まれた木道を、鳩待峠に向かってゆっくり歩いた。

こうして、わたしの今年最後の尾瀬は終わった。

                おわり
〜2003年10月30日-31日:鳩待峠から尾瀬ヶ原へ〜5        
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