講道館杯日本体重別選手権大会2日目


SINCE 2002/11/24


・-60kg級
(準決勝まで)
1:野村忠宏選手
最も注目されたのは五輪2連覇の野村忠宏選手です。

初戦は国士舘の明石選手でした。
組み手を持つとすぐに内股フェイントの支え釣り込み足で効果、
巴投げで身を沈め、深く入れないとなるとすぐにしゃがんだ姿勢から立ち上がり、
即座の大内刈りで押し込んで、試合時間は35秒の一本勝ちです。

二試合目も栗栖選手、佐藤選手と警察選手を破って勝ち上がった、
近代附属福山高校の平岡選手を相手に右手を殺し、足技や担ぎを多彩に見せ、
46秒、背負い投げ一本勝ちで準決勝に進みました。


2:内柴正人選手
野村選手の相手は、内柴選手でした。
内柴選手は減量もうまくいったようで、非常にきびきびしたいい動きでした。

なかでも驚いたのが、今年実業個人優勝の小川選手との試合です。
千葉県社会人大会、千葉県国体予選、実業団体と個人。
小川選手の出場試合を、今年自分は最も見た観戦者のひとりだと思います。

そのほとんどで小川選手はいい試合をして強さを見せてくれましたが、
内柴選手との試合では、内柴選手がいきなり組んでの5秒、払い腰で技あり、
さらに22秒、今度はほとんど一本の技あり、合わせ技で勝ちました。


(準決勝)
試合は野村選手が片手を持った形から背負い、大外で飛び込みますが、
内柴選手は迅速に対応し、足を掴んでひっくり返そうとします。
待ての後、野村選手は左の背負いに入りますが、内柴選手はしゃがんでこれを外し、
一回転して体の抜けた野村選手の上体を抱えながら、足を掴んで浴びせ倒し、
変形のすくい投げか谷落しか朽木倒しか技名不明ですが、背中から野村選手が落ちます。
35秒、内柴選手の一本勝ちです。

内柴選手はあらかじめ対策を練っていたように思えるほど、スムーズな動きでした。

野村選手は3位決定戦で、敗者復活を勝ち上がった桐蔭横浜大学の高橋選手に
押さえ込まれて、敗れました。巴投げが外れたところを高橋選手はひっくり返し、
上に乗っての、肩固めで、一本勝ちです。
寝技の得意な高橋選手の見事な勝利でした。


反対側のブロックはグランプリ優勝の江種選手と、徳野選手でした。
試合を見れませんでしたが、江種選手がポイントを奪い、決勝に進みました。


(決勝戦)
内柴選手は左、江種選手は右の喧嘩四つです。
序盤は内柴選手が引き手を殺しますが、技数としては互いに警戒してか少なく、
間合いに入れないところ距離では江種選手の巴が出て、内柴選手が飛びますが、
信じられない速度で対応し、失点を防ぎます。

逆に江種選手の左引き手が内柴選手の右引き手を殺し、
内柴選手が切るシーンもありました。
引き手の攻防は激しく、2分で注意まで行きます。

技数では江種選手が巴や谷落しを見せ、内柴選手は上になっての寝技や、
巴からの十字狙いと思える動き、小外など、同じぐらいです。

江種選手の出足払いが内柴選手を転ばせますが、ポイントは無く、
亀になった江種選手の上を取った内柴選手が寝技を狙うと、
江種選手はすぐ体をひっくり返して、逆に上に乗り、縦四方の形を作ります。

腕をあおるような形で立ちから腕ひしぎ腕固めで、内柴選手が腕を
決めかけるシーンもありましたが、これは江種選手がよく堪えました。
逆に江種選手が隠し技?の飛びつき腕十字を見せました。

試合は両選手共に動きますが、ゴールデンスコアの延長戦に入ります。
江種選手を横に動かし、内柴選手が払い腰を狙ったその戻りを江種選手は
巴で切り返し、あわやという場面もありました。

そして組み合っての谷落しで江種選手は技有りを奪い、優勝を決めました。
インタビューが非常に面白く、会場に笑いが絶えませんでした。


・-81kg級 注目はここでも復帰選手、瀧本誠選手でしたが、兼三選手も出ていましたし、 同じブロックには2001年選抜で瀧本選手を有効で下した野瀬英豪選手がいます。 1:瀧本 誠選手 瀧本選手の初戦は高校選手権でも大活躍、東海大相模のエース、武藤力也選手です。 武藤選手は組み手で積極的に瀧本選手を攻め、左釣り手で距離を取り、 右の引き手を激しく動かし、若手らしい速く積極的な試合でした。 瀧本選手は喧嘩四つの釣り手同士の形から左の一本背負いで有効を奪います。 武藤選手は積極性を失わずに攻めますが、瀧本選手は引き手を持ち、 肩越しに釣り手で背中を持つとすぐに内股を出し、一本勝ちです。 二回戦は昨年のジュニアを制し、アジアジュニアも優勝の筑波大学、仲田選手。 仲田選手の守りは堅く、喧嘩四つの形で瀧本選手は内股を狙いすが、 腰を抱えての防御や、そこからの切り返しに苦戦します。 しかし、積極的な攻めを行えなかった仲田選手が「消極的」の反則ひとつ分、 先行してしまい、試合時間をフルに戦っての優勢勝ちでした。 この直後の野瀬選手の試合は内股を防がれた後の跳ね上げるような小外刈り、 試合時間は非常に短く、試合を終えたばかりの瀧本選手との準々決勝と思いましたが、 インターバルが許されたようで、しばらく待ってからの試合です。 喧嘩四つ、野瀬選手は内股を仕掛けると、瀧本選手はまたぐように外します。 さらに左の一本背負い投げは野瀬選手の体が一回転し、主審と副審3人の判定が 「一本」「有効」「効果」に分かれましたが、腹ばいに落ちており、効果となりました。 (2002/11/25補足:会場でこの場面を見ていた方より、「副審のひとりは有効ではなく、 何もなしを示した」とご指摘いただきました。この後で主審は「有効」を宣告しましたが、 評決が分かれた場合は間の判断を取りますので、「効果」に訂正されたとのことです。 ご指摘、誠にありがとうございます) 両選手、交互に内股を掛け合い、もつれ合う中、払い巻き込みのような形で 膝をついてから立ち上がった瀧本選手に内股をかけ、いい角度で落として技あり、 さらに腕十字を極めに行きますが、待て。 両者に指導が出ていたなか、攻め込む瀧本選手に野瀬選手は守勢となり、注意。 警告になれば効果差ひとつで、負けになります。 野瀬選手は激しく前に出ますが、瀧本選手は組んで形を作ると得意の内股。 足をあげて踏みとどまる野瀬選手の足が瀧本選手の背中に乗ると、 瀧本選手は足を戻し、そこから野瀬選手の残った足を大外で刈る連携で、技ありです。 そして組際の小内巻き込みで技あり、合わせ技の一本勝ちです。 この時点で、高校生、ジュニア、シニアのトップ選手が瀧本選手と対戦しました。 2:武藤 力也選手 若手の武藤選手は敗者復活戦で、素晴らしい結果を残しました。 同じく瀧本選手に敗れた仲田選手に、大外で踏み込んだ仲田選手の足を外し、 内股で返しての鮮やかな一本勝ちでした。 次に戦うのが野瀬選手でしたが、ここも組み手ではまれば、いい形で運びました。 リズミカルな左右の動きは止まらず、積極的に動きます。 完全に組まれれば動きを止められましたが、それでも崩したり、場外に追い詰めてと 善戦し、最後は大内刈りで一本負けしたときも畳を叩いて悔しがるなど、 瀧本選手、仲田選手、野瀬選手と対戦した今回の、 この次の「試合」を非常に見たくなる、今日の武藤選手でした。 そういえば高校選手権のときも重量選手相手に釣り手で巧く距離を取っていました。 後述する有留選手もそうですが、ジュニア選手でシニアの大会で通用する選手に 共通するのは「組み手」の強さです。 「組み手」が強ければ相手に得意の形を作らせず、「失点」を防ぎます。 尚且つ、自分の得意な形に持っていくこともできます。 攻撃だけの選手では一本負けが多く、波が激しくなってしまいますし、 逆に決定力がないと得意な組み手を作れても、試合を決められません。 今回は両選手共にバランスよく「組み手」「技の切れ」の両輪が揃っていました。 3:有留 秀宜選手 中村兼三選手は2回戦で、国士舘大学の有留選手に「有効」で敗れました。 何度も得意の寝技に行く形があったのですが、有留選手はすべてしのぎました。 逆に一度は上から攻めようとの気迫も見せました。 立ち技でも兼三選手には切れ味があり、今年の選抜優勝したときも厳しい組み手で 旭化成の塘内選手を封じましたが、今回は有留選手が互角に渡り合い、 身体を持っていかれるような危ない場面もあまりありませんでした。 そして試合終了間際、残り16秒ぐらいで、左の背負い投げで有効、 この決勝点を守りきり、同期の片渕選手に続いて、国際級の先輩選手を破りました。 しかし有留選手は昨年講道館杯5位、パワフルな柔道の坂本道人選手に一本負けしました。 それでも敗者復活では昨年の実業22歳未満で優勝した自衛隊体育学校の相牟田選手を 袖釣りと首投げのような形で担ぎ上げて一本勝ちしました。 次の敗者復活で立ち塞がったのは、ここでも野瀬選手でした。 本来は「4:野瀬 英豪選手」ともすべきですが、野瀬選手は有留選手の左背負いを 半身でかわし、そのまま体を浴びせて後ろに落として、「効果」を得ます。 最終的にこれが決めてとなり、野瀬選手が勝ちましたが、 野瀬選手の切れのある内股や、得意の腕十字を防ぐなどの防御面と、 前に出て足を出して刈り、担いでいく闘志など、素晴らしい試合でしたし、 若手選手を相手に気迫負けせず、力を見せた野瀬選手も良かったです。 (準決勝) 瀧本選手は右、坂本選手は右です。坂本選手の力強い右釣り手が距離を保ち、 首を抑え、両選手共に組み手の攻防に終始し、なかなか技が出ず、注意まで行きます。 踏み込んでの大外を出した坂本選手に、瀧本選手は内股で返し、効果です。 この辺り、技を受け流し、そして返す技術が卓越しています。 内股や大外を繰り出し、寝技では上になる坂本選手は瀧本選手の小内巻き込みを防ぎ、 組み負けてもおらず、がっちりと持っていけるパワーがあります。 大外を仕掛け、内股で切り返されるのを読み、そのあげた足を持って すくい投げに行くなど、試合中にも、深い読みも見せます。 しかし、瀧本選手の「やわらかさ」が坂本選手を受けきり、試合は終了します。 瀧本選手の「効果」が決め手となり、優勢勝ちです。 (決勝戦) 決勝は瀧本選手と、小野卓志選手です。 実業を優勝して、窪田選手にも一本勝ち、塘内選手との戦いも制して、 絶好調と思えた村田龍一選手を破って決勝に進んでおり、 決勝戦の内容も、素晴らしいものでした。 組み手の厳しさは無差別の団体戦でも重量級相手に組み負けない点で定評があります。 左右のリズミカルな組み手は始終動き、井上康生選手、高松選手なども見せるものです。 先に組みに行くのも技を仕掛けるのも小野選手です。 大外、大内と攻め立てますが、大内はやわらかく勢いを殺され、自分が膝をつきます。 さらに瀧本選手の袖釣りを待っていたとばかりのすくい投げで身体をひっくり返し、 腹ばいで落ちたものの、タイミングは絶妙で、試合の流れは小野選手が作りました。 瀧本選手への会場からの歓声も増え、小野選手は「アウェイ」のなか、 体落し、絞めなど積極的で、左右の動きは瀧本選手が組み手を切る回数を増やします。 しかし瀧本選手もしっかり持つと際立って強く、小野選手が小外で足を飛ばしたところを すぐに内股で切り返し、小野選手の受けが巧かったのでポイントになりませんが、 要所要所で相手に流れを渡さない、技の切れは普通ではありません。 じっくりと試合を楽しむように、小野選手の柔道を受け止めるような瀧本選手。 真っ向から勝負して、何度も瀧本選手を押していく小野選手。 終盤、小野選手が瀧本選手の組み手を嫌う場面も増えました。 送り足払いで体が浮くと会場がどよめきます。 もう一度、密着しての「小外掛け」を仕掛ける小野選手と、それをまたしても内股で浮かせ、 防ぐだけではなく、切り返していく瀧本選手。 消極的と、残り時間57秒で瀧本選手に「指導」です。 小野選手、優勢に立ちます。 瀧本選手、前に出て、小野選手を潰し、技も潰します。 そして31秒、出足払いで効果を取り返し、ポイントが並びます。 緊迫した状態で延長戦に突入します。 瀧本選手の内股をしのぐ小野選手。 やや小野選手の組み手の動きが止まり、瀧本選手の攻めが増えます。 小野選手も大内で攻めますが、これは上体を捻られ、支え釣りこみ足で切り返します。 小野選手も攻めますが、袖釣り、巴と技の豊富な瀧本選手に動きを止められますが、 7:13、組んですぐの瀧本選手の内股を防ぎ、次には足を持っての肩車を狙います。 小野選手の大内を防ぎ、間合いを計り、組合い、 そして袖釣り込み腰が小野選手を担ぎ上げ、見事すぎる「技あり」、試合を決めました。 インタビュアーの言葉に、「やっぱりぼくが一番だと思いました」と話されるなど、 非常に明るく、瀧本選手は柔道や雰囲気を楽しまれている感じでした。 今後についても、「これしか考えていなかった」と話されていました。
・-100kg級 最初の試合に井上智和選手が出ており、ちらっと見ていたのですが、 そこで対戦相手の庄治選手が縦四方で押さえ込んで一本勝ちという、幕開けでした。 庄治選手はこの階級では珍しく、非常に積極的に寝技を仕掛け、 それも繋ぎの技も巧く寝技に連動しており、今日は大活躍でした。 注目の穴井選手は初戦を勝ち上がりましたが、2戦目で南波選手の内股に 敗れたそうです。その南波選手は石井選手に敗れ、敗者復活はありませんでした。 反対のブロックは東海大学の今井敏博選手と、小嶋新太選手で、 小嶋選手が決勝に駒を進め、初優勝を狙います。 どちらが勝っても初優勝の決勝戦。 前に出て積極的に組む小嶋選手の内股が何度も庄治選手を襲いますが、 庄治選手は喧嘩四つで深く入られると腰を離し、 小嶋選手の腰を抱えての完全な防御で対応します。 自分からの攻めでは釣り手だけの内股であおり、内股で踏み込む小嶋選手の軸足を 小外掛けで払いますがこれは、場外です。 消極的で受けに回る庄治選手に指導が出ますが、庄治選手はマイペースで、 小嶋選手の内股狙いを防いで流し、踏み込んだところを深く両足を刈り、 小外掛けで一本勝ち、嬉しい初優勝を飾りました。 インタビューでは井上選手、鈴木選手と選抜で戦いたいと抱負を述べ、 瀧本選手に並んで、日本大学出身選手の優勝となりました。


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