全日本選手権大会
第十四試合


赤:養父 直人選手

(天理高校職員←天理大学:12回目:近畿地区代表:184cm・125kg)

白:向川 肇選手

(日本中央競馬会←帝京大学:初出場:東京地区代表:181cm・125kg)
現役では最多出場の養父選手と、東京大会優勝の向川選手です。向川選手の試合を初めて見たのが、去年の東京予選、高井洋平選手から合わせ技で一本勝ちしたので、記憶に残りました。

そして去年夏の実業個人では江上選手から一本勝ちと、そんなふうに、気になる試合があって、その後に選手が大会で上位に入ってくるのは、観戦のひとつの楽しみです。

養父選手は増地選手と同じく、学校にて指導する傍らでの出場であり、自分自身の練習時間はあまり取れていないと思える中、近畿代表になり、今年も姿を見せてくれました。

ベテラン選手と今伸びている選手の対決です。

向川選手は左、養父選手も右です。いきなり向川選手は養父選手の襟を持ち、押し付けるような形を作ります。引き手も持ち、形を整えますが養父選手は右手で向川選手の左釣り手を引っ張り、距離を置きます。0:36、教育的指導が両選手に与えられます。

向川選手は果敢に前に出て奥襟を掴み、引き手を持つと養父選手の足を払い、巨体を浮かします。腹ばいでポイントになりませんが、この後も間合いは圧倒的に向川選手です。養父選手は釣り手を持とうとしますが、その肘の下に向川選手の突っ張った釣り手が入り、外されてしまいます。

そして、1:52、養父選手に指導です。養父選手、その後の組み手で向川選手の釣り手の上に自身の肘を乗せて距離を制し、内股を出しますが、引き手が外れます。この後も養父選手は釣り手をなかなか持てず、苦戦が続きます。さらに2:54、注意が与えられ、向川選手の力に振り回され、スタミナが切れたように息が荒くなります。

劣勢の中、背負投げを出しますが、防がれます。間合いは圧倒的に向川選手で、次第に向川選手は引き手の方も巧く殺していきます。4:06、ついに養父選手に警告です。向川選手はさらに攻め、内股などを出しますが、これは養父選手が防ぎます。

後が無い養父選手は両襟を持ち、間合いを詰めての内股を出しますが、これは弾かれます。随分頭を下げられてしまい、自在に振り回され、向川選手があおると膝をつかされてます。破壊力のある左釣り手というのでしょうか、養父選手の消耗が尋常ではなく、団体の勝ち抜き戦で数戦連続で戦ったかのような疲労の度合いです。

主審が協議し、反則負けを出すかの話になりましたが、それは行なわれませんでした。5:27、向川選手は小内で牽制し、大外のフェイントもあったでしょうか、足を上げてからの払い腰で養父選手を正しく捻じ伏せたような、自身も浮かぶ勢いの豪快な一本勝ちです。

養父選手の疲労の度合いが、自身の練習をする時間が無かったものによるのか、わかりませんが、向川選手の上からの圧倒的な圧力が大きかったと思えます。この「仮説」を裏付けるように、三回戦、四回戦と、向川選手の左釣り手は、ほとんど持たせてもらい無いほどに、厳しく警戒されました。

14 養父 直人 × 払腰 向川 肇

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