全日本選手権大会
第十三試合


赤:井上 康生選手

(綜合警備保障/東海大学大学院←東海大学:6回目:推薦:183cm・100kg)

白:佐藤 匡貴選手

(福島県警←東北福祉大学:初出場:北海道地区代表:192cm・145kg)

今回参加選手の、最注目選手のひとりである井上康生選手と、大会で最も大きく、最も体重が重い、佐藤匡貴選手の対決です。康生選手の試合を直接見るのは初めてなので、非常に楽しみな一戦でした。4月の選抜でも圧倒的な強さを発揮しており、今の実力が無差別でどの程度なのか、興味もあります。

康生選手の試合前の発言に、このようなものがあります。

『あれから(昨年の全日本選手権)1年が経ってますからね。自分自身、去年より力がついている自信はあります。進歩していなかったら恥ずかしいですしね、それだけの練習をしてきましたから』(全日本柔道選手権大会2001年パンフレットP39より)
1999年世界選手権・2000年五輪の金メダリストでありながらも、康生選手はさらなる上を目指しているのだと、そしてそれ以上に驚きなのが、まだ『成長過程』なのだという事実を語ってくれるのが、このインタビューです。

佐藤選手は初出場ですが、体格を利し、この井上選手とどのように戦うのかも気になります。100kg級も重量級ですが、それでも45kgの体重差は驚異的です。

前に思い切りよく出て行く康生選手です。組み手争いは激しく、佐藤選手は左、康生選手は、右です。釣り手を取ろうとする佐藤選手ですがなかなか取れず、引き手は康生選手に殺されている感じでしょうか。

組み合った後、康生選手の足払いがあってから、切ります。自分の角度から、ほとんど組み手の攻防が見えませんが、康生選手は自分の組み手になったのでしょう、内股を出して、佐藤選手の身体を浮かせますが、これはすぐに離れて引き手も切れていることから、浅かったようです。

この時点で康生選手は右の釣り手を、佐藤選手の釣り手内側に入れており、巧くコントロールしています。

康生選手の内股

佐藤選手は引き手も襟を持つように組んでいます。康生選手は動きながら大内刈りを出しますが、佐藤選手がそれを耐えて、圧力を掛けていき、康生選手が佐藤選手の右側の釣り手を切ろうとしたとき、佐藤選手は内股を試みます。

しかし、これは康生選手がタイミングを読んで前に身を沈める形で透かします。透かした後、佐藤選手の左手が離れてしまい、康生選手は自分の組み手を左記に整え、ケンケン内股で持ち上げますが、佐藤選手はしのぎます。

康生選手の内股

康生選手は右釣り手で佐藤選手の動きを制しており、左の引き手もしっかり持っています。力負けしておらず、自分の組み手にしているようです。そこから、大外刈りへと踏み込みますが、これを佐藤選手が外した際に場外へ出て、『待て』が入ります。ここまででだいたい、1分ぐらいでしょうか。

次の局面、再び康生選手は先に組みに行きます。まず左手で相手の左襟を確保して、それから右の釣り手でそこを掴み、次に引き手を奪いに行きます。真っ向から組んで大内刈り、内股への連絡を見せますが、倒せません。佐藤選手は逆に内股を仕掛けますが、これも決定打となりません。

康生選手は佐藤選手の左釣り手を切りに行きます。佐藤選手はそれを嫌いながらも自分から外して、さらに全身で右の引き手を離そうとしますが、こちらの手を康生選手は離さず、引き離そうとして後ろに下がった佐藤選手を追いかける形でぱっと右の釣り手を取ります。康生選手は組み負けず、非常に握力と腕力があり、体格差を感じさせません。

康生選手の釣り手は下になっても、佐藤選手の釣り手に潰されないように、まず佐藤選手の頭を下げさせることでバランスを崩し、次に、佐藤選手の釣り手側の力が乗るポイントの肘を巧くずらして、自分の肘に乗せさせません。

康生選手の大外刈り

佐藤選手の払い巻き込み

全身を使って、下へ引きずり、手前に崩して、小内刈りとコントロールする康生選手に対して、佐藤選手は思い切りのいい払い巻き込みを見せます。康生選手は円を描くように回り込んで、佐藤選手の勢いを逸らし、佐藤選手を潰します。
『待て』の後、互いに釣り手を持つ手を組み合ったりとしましたが、康生選手は組み手を持つと大内刈りで前に前にと攻め込んでいき、体を預けるように下から押し上げた直後、くるっと身を翻して、膝をついての背負い投げです。

絶妙のタイミングで決まり、佐藤選手の体が回って、『一本』です。

康生選手の背負い投げ1

康生選手の背負い投げ2




井上 康生 背負投(01:38) × 佐藤 匡貴

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