全日本選手権大会
第十ニ試合


赤:下出 善紀選手

(旭化成←東海大学:9回目:九州地区代表:188cm・135kg)

白:村瀬 秀行選手

(旭川大高教員←早稲田大学:3回目:北海道地区代表:182cm・115kg)

もうひとりの9回目出場、下出選手と、1回戦を豪快な払い腰で勝ちあがった村瀬選手との対決です。村瀬選手は大きく見えましたが、下出選手はさらに大きく、重量級同士の迫力ある対戦です。下出選手は昨年の全日本選手権3位、講道館杯3位、嘉納杯優勝の実力者です。尚且つ、昨年の全日本では棟田選手、講道館杯では高井選手と、若手のホープにもきっちり勝っています。

さて、残念なことに、こちらの不手際で、試合を途中からお送りすることになります。試合の途中になって、録画をし忘れていたことに気づいたのです。

試合は下出選手が右、村瀬選手が左の喧嘩四つです。体格的に勝る下出選手がやや上になり、力で押せる格好です。下出選手は前に前にと押していき、釣り手を持つ右肘に力を込めて、村瀬選手の頭を下げさせながら、同時にその釣り手を潰していきます。

引き手を先に持っていくのは村瀬選手ですが、下出選手が持ち返そうとするとそれを外し、間合いを計ります。下出選手は引き手を回しながら、持たせるように出して、持たれたら切るを三度ぐらい繰り返し、一瞬の隙をついて、自分から先に引き手を持つのに成功し、下出選手の攻撃が始まるかと思いましたが、これを村瀬選手は巧く切り、再度、引き手を抑えにいきますが、これも切られます。

再度、下出選手は腕を差し出すように引き手を持たせ、持たれたら即座に腕を回して、円を描くように自分の引き手を取ります。これは、下出選手の戦法のようです。映画『ベストキッド』を思わせるような、変幻自在の動きです。

下出選手が引き手を誘う

村瀬選手の体落し

しかし、先んじて攻撃を仕掛けたのは村瀬選手です。体落しを繰り出します。これを下出選手は跨いで防ぎ、引き手が離れると先ほど同様に、誘いの手を見せます。今度は村瀬選手がその先を読んでおり、引き手を持つと同時に反対側に揺さぶる支え釣り込み足を出します。

これには下出選手も揺らぎますが、すぐ体を直して、がっしりと自分の組み手にして上からの圧力をかけます。村瀬選手は少しずつ頭が下がり、下出選手は大内刈りを出しますが、外されます。

両者、再度、組み手から始まります。下出選手は引き手を誘い、持たれるとすぐ持つ戦法で再び、引き手を掴みます。そして払い腰でしょうか、前に大きく踏み込みますが、これにあわせるように村瀬選手も前に並行移動して、動きを封じて、逆に小外刈りで足をかけていきます。

重量級とは思えない俊敏な引き手の奪い合いが始まります。村瀬選手は場外際から回り込んで下出選手を逆に追い詰め、大内刈りを出します。防いだ下出選手は釣り手のみで回すように村瀬選手を崩して、押し出されない動きをします。村瀬選手はそこから内股を見せようとしますが、これは下出選手が太腿の裏に膝を押し付けて、出させません。

軽やかなステップで下出選手は場内へと村瀬選手を引き寄せていきます。そして足払い、大内刈り、内股と連続に技を掛けていき、それを外されると手前に強く引き付けながら、思い切りのいい内股を見せますが、これを村瀬選手は潰して、『待て』が入ります。

村瀬選手の支え釣り込み足

下出選手の大内刈り

次の局面、下出選手は自分の組み手にするとどんどんと圧力をかけます。内股のような動きを見せますが、これは村瀬選手が防ごうと足を上げます。そして内股を警戒させておいての大内刈り、これもバランスの取り方からいつ内股に変化するかもわからないような形で続きますが、村瀬選手は堪えて、足をつきます。

二回目の攻め手は巧妙でした。再度、内股を繰り出しますと、村瀬選手は腰を下げて、それを防ごうとします。しかし、下出選手はその足を思い切り跳ね上げようとはせず、降ろしながら、村瀬選手の右膝の後ろを軽く蹴るような感じで崩します。

下出選手の小内?

そしてその足で、村瀬選手の左足を思い切りよく大内刈りで跳ね上げていき、上体もぐっと引きつけてコントロールして、見事な『一本』を取ります。

前後左右に巧く崩している、流れのようでした。

下出選手の大内刈り




下出 善紀 大内刈り(03:41) × 村瀬 秀行

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