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東京大会で、最もその動きに驚いたのが棟田選手です。試合内容もほとんどの試合で一本を取り、積極的に攻める。素晴らしい柔道を体現していました。 しかし、その後に靭帯を痛め、選抜を欠場されています。調整が出来ているのか、その点が気になりましたが、今回の大会では、初戦から動きが、まったく違っていました。何よりも、攻めが出ていません。 対する宗選手は均整が取れた長身で、棟田選手との身長さが実に、18cmもあります。九州電力ですから江上忠孝選手と同じ所属ですね。『近代柔道』2001年4月号では、『九州電力』の柔道部を訪ねる記事があります、というのは関係ないですね。 |
体重的には棟田選手が重く、宗選手は足元から崩していくのでしょうか。序盤から試合の流れは棟田選手が下から押し上げて、前に出て行く形となっており、宗選手が覆い被さるように潰していく展開にはなりません。 両者共に技が出ず、組み手の途中で相手を交互に潰す感じで、棟田選手は寝技を狙いますが、待てが入ります。 棟田選手は左、宗選手は右という喧嘩四つ、両者は釣り手を持ち合いますが、肝心の引き手が互いに譲らず、なかなか組めません。開始一分ぐらいで、両者に『まともに組み合っていない』と『指導』が与えられます。 この後、宗選手は先んじて引き手を持ち、棟田選手に押されながらも内股を試みますが、宗選手が下げた状態を棟田選手が巧く潰し、組み手が切れて、宗選手は倒れます。 |
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試合は棟田選手が前に出て、圧力をかける形で続きますが、お互い、技が本当に出ません。互いに引き手を持てない状態で、宗選手が釣り手となる右腕を思い切りよく引いて、棟田選手を崩しに行くのですが、これで棟田選手は前に倒れてしまいます。少し腕やどこかを痛めているようで、先刻も踏ん張れず、すぐ潰れています。 再度、組み手の攻防です。宗選手は棟田選手の手首を掴み、それから袖を取りに行きますが、棟田選手が腕を巧く回して、宗選手の袖を取り返そうとします。 宗選手はこれを嫌い、すぐ手を離しますが、今度はその手で棟田選手の襟を持ち、大内刈りを試みますが、棟田選手は空いている右手で宗選手の引き手を取りに行き、宗選手はこれを警戒して手を離し、技を最後までかけません。 |
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宗選手の方が先に引き手を持ちますが、棟田選手がこれを持たせず、ここで再度、両者に『組み合わない』と、『注意』が与えられます。それから棟田選手は積極果敢に前に出ますが、やはり前までと同じく、引き手が互いに死んでいて、ただ外に押し出すだけになります。ただ、今までと違って、棟田選手が引き手を取りに行き、宗選手がこれを弾く感じに、なっているのでしょうか。 |
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この後、棟田選手は再度、宗選手を場外際まで追い詰めます。組み合った後、棟田選手が宗選手を弾いて潰し、場外の『待て』が入ります。 |
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後のない宗選手は積極的に内股を出して浮かせますが、これも決め手となりません。今までと同様に、棟田選手が宗選手を追い詰めて、潰していくか、場外に出て行く。そうした、技が出ない、組めない試合が続きます。といいますか、ここまで来て気づきましたが、棟田選手、目立った技を一度も、出していません。足の調子が悪いからか、崩しの足技さえ、です。多分、棟田選手、技数がゼロです。 ……東京大会を見ていた分だけ、同一人物の試合とは思えないほど、それは棟田選手の不調を物語っています。なにしろ、技が出ていません。宗選手には不運に思えます、あの『警告』が痛手となり、逆転できないまま、時間切れを迎えます。この試合、棟田選手が圧倒的に前に出て試合をコントロールしていましたが、技を数多く出して、相手を崩したのは負けた宗選手でした。写真の数が、それを物語っています。あまりにも厳しい結果かなと、思います。 |
棟田 康幸 | ○ | 優勢勝ち(警告) | × | 宗 真一郎 |