全日本選手権大会
第四試合


赤:田村 和也選手

(日本道路公団←近畿大学:4回目:東京地区代表:183cm・118kg)

白:森 大助選手

(北海道警←天理大学:2回目:北海道地区代表:186cm・105kg)
田村選手は東京大会でその姿を見ました。全日本団体でも見ているはずですが、東京大会で印象に残ったのが、この前の試合を終えた鈴木選手から、綺麗な一本を奪ったことです。最終的に東京大会では棟田選手に敗れて2位となりましたが、今回の試合は楽しみのひとつでした。

上背がある森選手と、がっしりした田村選手。両者の組み手の攻防は、激しく始まります。田村選手は森選手の左の釣り手を、自身の引き手で制し、即座に右の釣り手で奥襟を取りに行きます。しかし、これを森選手は外します。逆に森選手が奥襟を掴みに行くと、田村選手は全身を揺さぶって勢いよくそれを外して、両者の争いは止まりません。

両者距離を開けてから、道衣を正し、再び間隔を詰めていきます。田村選手は左手で森選手の襟を掴み、同時に森選手は右手で奥襟を掴みに行きますが、それを田村選手はさせず、腕を弾きます。上から掴んでいく森選手に田村選手は頭が下がりますが、巧く回り込んで引き手を切ります。そして再度組みに行き、森選手が持てないよう制しながら、背負い投げを出します。

田村選手の背負い投げ

田村選手の足取り

入りが浅く、森選手に防がれたと見るや、田村選手は右の釣り手を持ったまま身体を回して技を続けながら、器用に左手で森選手の右足を掴んで、倒しに行きます。迅速な判断による技の継続でしたが、これも森選手を崩すには至らず、先に立ち上がった森選手は寝技をせず、『待て』が入ります。

まだ開始時間から1分を過ぎたぐらいでしょうか。上背のある森選手の周囲を動きながら、田村選手が組み手を行っていきますが、森選手、ここでようやく大内刈りを出します。

これは入りが浅く、また組み手が不十分(田村選手の片側のみを持っている)で、有効打となりません。この後、田村選手の片襟で脇の下に入り込まれた森選手ですが、長い手足を利用して、上から田村選手の足を掴み、すくい投げを試みます。これは田村選手が体を捻り、逃れます。

森選手のすくい投げ

『待て』の後、今度は田村選手が大外刈りを出しますが、森選手に弾かれます。森選手も田村選手も片襟での組が多く、森選手が大外刈りを出そうとしますが、出鼻をくじく格好で今度は田村選手が踏み出した森選手の足を掴んで、すくい投げを出します。これも、森選手が防ぎます。

両者、組み手に苦しみ、まともに組めませんが、田村選手がここで左組み手での背負い投げを敢行します。入りは浅いのですが、これが森選手の虚をつきます。田村選手は四つんばいに近い格好にまで森選手を引きずり落し、そこから跳ね上げ、ぐるりと一回転させます。会場からは『一本だ』の声もありましたが、巻き込むような形で勢いが無かった為か、『有効』となります。

田村選手の背負い投げ1

田村選手の背負い投げ2

この後、小外刈り、大内刈りを繰り出す森選手に再度背負い投げを見せ、会場を沸かせる田村選手ですが、これはポイントになりません。組み手に苦しみ、お互いにいい状態で技が出せません。

森選手が内股を出す、田村選手はそれを足を持ってすくい投げに行く。再度、田村選手の背負い投げ、試合は動いているのですが、お互いに組み手を解いて、再度、組みに行く、この流れが続きます。

田村選手が大外刈りを出し、これがタイミング的には入ったような感じでしたが、組み手的には片襟で森選手の上体を崩せておらず、なんとか倒しかけたものの最後に離れてしまい、森選手はかけられた足を上に抜くような形でこの技を防ぎます。

この頃になると両者、非常に困憊している感じです。田村選手に片襟の『指導』が与えられますが、田村選手はその後も攻め続け、時間切れを迎えます。『有効』が決定打となり、田村選手の『優勢勝ち』です。

いまのところ組み手が不十分だと技が入らないのを実例から理解できますが、なぜ今回の試合のように、お互い片襟となるのか、わかりません。 自分でしているのか、結果としてそうなっているのか。外人選手の場合は戦術的に行う場合がありますが、今回は 特に意識してやっているようには見えませんでした。

それはさておき、試合が判定まで行くと描写が大変です……



田村 和也 優勢勝ち(有効) × 森 大助

全日本トップへ戻る