66kg級
〜第53試合〜


赤:小室 宏二選手
(了徳寺学園・筑波大学大学院←筑波大学:165cm・66kg)
白:内村 直也選手
(コウエイシステムズ←筑波大学大学院:170cm・66kg)



小室選手の大先輩、内村選手です。この日は既に2試合戦っていますが、背負投げの切れ味は絶妙で、この準々決勝はどちらが相手の得意技を封じるか、そこにかかっていたと思います。

お互いに先輩後輩とやりにくかったと思いますが、それを払うように内村選手は気合の入った声を出し、小室選手も同じく気合十分で試合に臨みます。両者の気迫は見ている方にもびりびりと伝わり、緊迫した雰囲気で攻防が始まります。

この試合を特徴付けたのが、第一に内村選手の組み手です。

写真のとおり、内村選手は小室選手の左釣り手の袖を巧く持ち、完全に殺します。この組み手を徹底的に守り、小室選手の組み手にさせません。そして左の釣り手で左襟を持った瞬間に小内刈を仕掛け、先に先にと動きます。小室選手も前に出ますが、思うように組めません。0:47、「待て」が入り、両者に組み合わないと「指導」です。
釣り手を封じる
背負投げ
2回目の攻防でも、内村選手は小室選手の左を殺します。小内刈を出し、試合の流れを握ります。ここで小室選手も1:27、左の背負投げを出し、攻めます。ここで足を取れたかもしれませんが、内村選手が左手を殺しています。横に動きながらも互いに押し合い、ここでもう一度、1:32、「待て」、両者に「注意」です。
小室選手、ようやく左の釣り手を持ちますが、これも外されてしまい、内村選手、徹底的に釣り手を封じます。1:52、小室選手にチャンスが来ます。内村選手の小内刈を巧く体を回して外し、上になります。 おおいかぶさって
足を抜こうとしますが、内村選手はこれをしのぎ、2:21、審判の「待て」が入ります。この直後、小室選手がなかなか立ち上がれません。足をいためたように、少し引いています。心配でしたが大事ではなかったようで、ゆっくりと柔軟をしてから立ち上がり、試合は再開します。 攻める
この攻防の直後、2:49、内村選手は左の引き手を外し、左の一本背負投げを出します。これに小室選手は体を持っていかれ、審判の陰になっていますが、「有効」です。
小室選手はすかさず起き上がり、内村選手に寝技を試み、上から覆い被さりますが、すぐに「場外待て」です。
背負投げ1(内村選手:有効) 背負投げ2
内村選手の組み手 残り時間、1分を切りました。ポイントを先行された小室選手、前に前にと釣り手を持ちに行きますが、内村選手はこれを外し、小室選手の組ま手にさせません。右の引き手は持てますが、どうしても左だけを持たせようとしない内村選手。小室選手も持つのに成功して技を仕掛けますが、内村選手も前に出られるたびに小内を仕掛け、流れを掴ませませません。
内村選手の背負投げ 内村選手の構えが左釣り手を絞り、いつでも背負に入れる体勢であり、また右の引き手も小室選手の左釣り手の肩辺りを抑え、距離を取りつつ、小内刈を散らしていきます。残り時間30秒弱、小室選手も自分の組み手を実現しますが、ここで背負投げを内村選手は試みます。
小室選手はこの好機を逃さず、上を取ると亀になったところを巧くひっくり返して、上に覆い被さる形へと持っていきます。場外際なので位置に気をつけながら、コントロールして腕を制しながら、中へ中へと動かしつつ、足を抜こうとします。

このとき、既に残り時間はわずかです。小室選手は足を抜くのに成功しますが、内村選手は体をひねり、「待て」、ここで寝技が途切れます。
下から… 寝技の攻防
小室選手は諦めず、積極的に前に出ます。そして自分の組み手にした刹那、飛びつき腕十字を試みます。

しかし、これは惜しくも極められません。内村選手は残り数秒の攻勢を耐え切って、試合は終了を迎え、内村選手の優勢がちです。
飛びつき腕十字
内村選手は小室選手の釣り手を封じ、またいい組み手になるまで、 技をかけませんでした。この前の2試合では結構、強引な形で得意の背負投げに入っていましたが、今回背負投げを見せたのは、2回です。

また技が崩れた瞬間、攻防が入れ替わるそれを熟知しており、もしかすると、技をかける瞬間は寝技を逃げられるようにと、場外際かどうかも計算していたかもしれません。今回、2回だけ見せた背負投げは両方共に場外際でした。

小室選手、惜しくも準々決勝で敗退でしたが、素晴らしい試合、ありがとうございました。小室選手の柔道の試合を生で見るのは初めてでしたが、寝技の攻防が非常に奥深く、またその鋭さや運び方、そして最後まで諦めない闘志に、感動しました。

このサイトが少しでも小室選手の選手活動の力となれますよう、今後も頑張っていきますので、サイトをご訪問の方々も、応援、よろしくお願いします。そして今回、一緒に観戦くださったあとらすさん、いち太郎さん、SUさん、寝業師さん、ありがとうございました。

少しでも試合の雰囲気が伝われば、幸いです。

2001/08/27 矢部里真樹