66kg級
〜第39試合〜


赤:小室 宏二選手
(了徳寺学園・筑波大学大学院←筑波大学:163cm・66kg)
白:内村 直也選手
(水戸葵陵柔道クラブ:167cm・66kg)



昨年の両選手の対戦については、こちらのレポートをご覧下さい。内村選手は徹底的に小室選手に釣り手を持たさず(ほとんど一度も)、一瞬の隙を見ての背負いで有効、技を施すときも場外際と、ミスをせずに小室選手を封じました。

今年はどんな試合展開になるのか、内村選手はここまでの試合、昨年同様マイペースで勝ち上がり、背負い投げの切れや、一瞬の切り返しの絶妙さは健在で、試合運びの巧さは、この年齢の選手しか持ち得ない、呼吸がありました。

試合の90%をコントロールしたのは小室選手でした。見ていて胃が痛む、ミスをした方が負ける繊細な試合運びで徹底し、内村選手の得意技である背負いを封じました。

両選手、凄まじい気合で向かい合います。小室選手はすぐに両襟を持ち、背負いを見せます。前に組みに行くのは小室選手で、今度は背負いの後に寝技に引き込みますが、内村選手は距離を取り、「待て」です。

内村選手は小室選手の左釣り手を封じようとしますが、昨年と違って、今年は組み手では小室選手が優勢で、内村選手の方から切るシーンもありました。持ち変えると巴で攻め、下から攻めますが、内村選手の防御は非常に巧く、距離を詰めさせず、「待て」です。(内村選手の『持ち上げてのパワーボム』的な動きもありましたが…)

小室選手は首を痛めたようで、少し気にしています。両選手、組際を警戒し、「指導」ですが、内村選手のすごさは、ここまで攻めが出ていないにも関わらず、罰則をなかなか得ていないところです。これは準決勝、決勝でもそうでした。

小室選手は釣り手を自由に奪い、引き手で距離を詰めながら、逆にその引き手を巧く使い、内村選手が背負い出回ろうとしたところの腕を、防ぎます。前に出て押すのは小室選手です。両選手、交互に膝つき背負いを仕掛け、再び小室選手が下から攻めますが、ここでも内村選手は巧く、「待て」です。

このまま行けば、小室選手の勝ちになると、思っていましたし、小室選手は積極的に攻めまくりましたが、内村選手とがっぷりと組み合い、両者が前傾で体重を掛け合う動きの中、小室選手の引き手を下に引きながら、ぱっと離して、内村選手は右手で小室選手の左足を刈りに行きます。

これが絶妙のタイミングで、小室選手は腹ばいで逃れます。内村選手はやや審判の判定を待ったのか、動きに隙が見え、すぐに小室選手に入り込まれます。この試合でようやく、寝技での内村選手の間合いが崩れ、小室選手は後ろから絞めを仕掛けに行きます。

しかし、内村選手が上になって、後ろから小室選手が絞めている場面で、審判は内村選手の「押さえ込み」を宣告します。小室選手はすぐ解き、ひっくり返して完全に腕を伸ばしますが、同時にブザーが鳴り、試合終了です。

昨年と逆に封じられたのは内村選手です。しかし、ほんの一瞬、あの残り時間わずかからの腹ばいに落とした技が、致命傷になりました。こればかりは、内村選手の一瞬を逃さないタイミング、呼吸が光り、旗判定は0−3で内村選手でした。

寝技での極めかけた腕十字も、現行の判定ではほとんど評価されません。試合全体を通した流れではなく、終わりの方に審判の印象に残る技が出るかどうか、これが今の評価方法だと思います。

終盤の寝技は小室選手のペースで、腕十字が入っていて、あと3秒あれば「参った」を奪えたと思うだけに、試合全体の優勢と、あの腕十字を評価してもらえなかっただけに、非常に残念でした。

試合についての小室選手の感想はコラムに書かれていますので、ご参照ください。

次回の講道館杯は世界選手権の第一次代表選考、また年齢でB指定から外れる小室選手にとって、強化選手として残る、重要な試合になります。